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INTERVIEW| RAFcheek,東京に疲れた夜に生まれた “ONE MORE LOVE” を語る。

東京の街に飲まれそうになった夜、ひとつの楽曲が生まれた。

“現実を歌う”というスタンスのもと、街の喧騒やクラブカルチャーを自らの言葉で描き続けるRAFcheek。新曲「ONE MORE LOVE」に込めた想いと、その背景にある東京観、仲間たちとの関係について語ってもらった。

── 今回は楽曲「ONE MORE LOVE」について伺います。制作のきっかけを教えてください。

「作り始めたのはたぶん去年の10〜11月くらい。ちょうど自分が東京という街にすごく疲れていた時期で、“なんでこんなに時間が速く流れて、みんなこんなに疲れてるんだろう”って感じていた頃でした。そんな夜に家でバーッと録ったものが、いまのHOOKの原型になっています。
そのデモを聞いて、以前から親交があったRuiくん(Y’s CAMP)に“これ、一緒にやらない?”って連絡したら、翌朝にはもうリリックが全部入ったデモが返ってきて。それが本格的な始まりでした。」

── 楽曲には “逃避行” というワードもありますね。

「そうですね。自分は現実であったリアルなことしか歌っちゃいけないと思ってるタイプだから、無理にハードな世界観を描くことはしない。(悪いことしたことないし)そのかわり、東京の喧騒と自然を対比するような、ちょっとヒッピーっぽい曲をずっと作りたかったんです。Ruiくんも山が好きで Y’s  CAMPのメンバーって自然を愛してる人が多くて。そういう姿に触れる中で、“こういう逃げ方もあるよね”って思ったんですよね。」

東京は、かつての“キラキラ”から“追われる街”に

── 出身はどちらですか?

「東京、大田区の洗足池っていうところです。今は26歳になります。」

── 東京に対する印象は、昔と変わりましたか?

「変わりましたね。5〜6年前までは“東京=キラキラしてる場所”って思ってた。渋谷にVISIONもあって、HIPHOPが盛り上がってたし、地方出身の大学の友達に“東京っぽい”って言われるのも、ちょっと嬉しかった。
でも、社会に出て働き始めた今は、満員電車で下を向いてる人たちとか、お金や何かに追われてるように見える人たちばかりで…東京って、すごい野心が集まる街だけど、みんなずっと365日、何かに追われてる感じがするんです。自分も含めて。」

コロナ禍が生んだ制作モードとクラブシーンの変化

── コロナ禍の影響で音楽を始めたアーティストも多いですが、RAFcheekさんはいかがですか?

「自分も影響があったと思います。2022年からKUROJIっていうクルーのタイシと曲を作り始めて、客演でサブスクに出るようになって。ソロを出したのは2024年で、完全にポスト・コロナのタイミングです。
だから、自分が今出せてるのも、コロナの間もずっと現場を支えてた人たちがいたからこそ、っていう気持ちがあります。」

── コロナ前後で、クラブシーンにはどんな変化を感じていますか?

「クラブに行き始めたのはVISONとかがあった頃で、今の池袋のBEDとかにはギリ行けた世代。でも、今の若い子たちは、そういう場所を知らないままシーンに入ってる。
ただ、今も勢いがあると思います。hiphopを好きな人が確実に増えてる。だからリスナーの人たちも、ぜひ現場に足を運んで、体感してみてほしい。
シーンを支えてる人たちの存在とか、カルチャーの流れとか、実際にディグってみるともっと楽しめると思います。」

ルーツは“花と雨”と“KANDYTOWN”そして地元のヒーロー

── 音楽のルーツ、リスペクトしているアーティストを教えてください。

「“原点”と“身内”、2つあります。
最初にラップっぽい音楽を聴いたのは中学のとき、SEEDAさんの『花と雨』です。そこから少しずつ聴くようになって、本格的に“こういうの作りたい!”って思ったのはKANDYTOWN。2016年くらいのファーストを聴いたとき、母親がブラックミュージック好きだった影響もあって、すごく響いたんです。」

── 身内で言うと?

「KUROJIのタイシ、Y’s CAMP、そしてSalvador Maniですね。
サルバは地元の隣の小学校のやつで、彼が『高校生ラップ選手権』に出たのを見て、“あ、音楽って俺にもできるかも”って初めて思わせてくれた存在。今一緒に曲作ってます。」

野外フェスで響かせたい“ONE MORE LOVE”

── 今後、出演してみたいフェスはありますか?

「りんご音楽祭は出たいです。2年前にY’sCAMPが出てて、“野外フェスってやっぱ最高だな”って感じました。
あと、フジロックも憧れですね。大倉倫太郎くん(新東京)に出演した話を聞いて、やっぱすげぇなって思いました。」

ファッションもストーリーテリングの一部

── MVでも印象的だった衣装ですが、Pickyouとの関係について教えてください。

「Pickyouは、ファウンダーのコウタとリオっていう同い年の友達がやってて、出会ったのは自分が21歳の頃。コウタはナイキとかタトラスともコラボしてたアーティストで、IKっていう映像作家が紹介してくれたんです。
今回のMVでも“お願い!”って衣装のスタイリングをしてもらいました。

“先生”と呼ぶ存在

── 他に話しておきたいことがあれば、ぜひ。

「IK、めちゃくちゃ影響受けてます。高校の同級生で、今も“先生”って呼んでるくらい。彼の存在も大活躍も、自分にとっては大きなモチベーションです。」

社会のスピードに追いつこうともがきながらも、誰かの“逃げ道”になれる音楽をつくりたい。
RAFcheekの言葉とスタンスには、そんな静かな意思が滲んでいた。
「ONE MORE LOVE」が灯す小さな火が、都市に疲れた夜のどこかで誰かの心をあたためる。

 
 
 
 
 
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