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INTERVIEW|4s4ki × DÉ DÉ MOUSE ― “奇跡”から始まったEPと、対話の軌跡

“奇跡”のように曲が生まれ、次の奇跡を呼び込んだ──4s4kiとDÉ DÉ MOUSEの共作EP『延命酒』はそれぞれの心の奥底を掘り下げていくような作品だ。制作を通じて重なっていったふたりの視点と感情。その交わりの中に生まれた言葉と音を、本人たちの対話から紐解いてゆく。

―― まずは今回のEP制作について、どういったきっかけで始まったのでしょうか?

4s4ki: 最初は、DÉ DÉ さんと一緒に「エスパー小学生」っていう曲を作ったのが始まりでした。あれは、ちょうど1年前にリリースしたEP「集合体大好病 / Collective Obsession」に参加していただいた感じだったんですけど、出来上がったときに「この曲めっちゃ良いね!」ってなって。そこから、もっと一緒に曲作りたいねって話になって、「永遠の覚悟」を作ったのが次のステップでした。

DÉ DÉ MOUSE: ちょうど去年の6月くらいに、〈ササクレフェス〉があったじゃないですか。あれ、20周年のイベントですよね。僕も4s4kiさんも出演してて、そのとき初めてちゃんとお話しして、「ちょっと一緒にやりましょう」っていう流れになったんです。

それでスタジオに入って、4s4kiさんが突然「エスパー小学生」っていうキラーワードを出してきて。そのとき僕が作っていたモチーフのテーマが、もうそのまま「エスパー小学生」ってタイトルになって。それで曲が完成したっていう。

4s4ki: 「エスパー小学生」以外にも、いくつかモチーフの断片を一緒に作っていて、それを元にしてDÉ DÉ さんがどんどん広げていってくださったんですよね。

DÉ DÉ MOUSE: 僕の中で、4s4kiさんのイメージってずっと“白くて透明で無垢”っていう印象が強くて。その“少女性”というか…なんか、すごく強く感じていたんですよ。で、それをどうにかして音で表現できないかなって、ずっと思っていたんです。

それで、去年の夏ぐらいに「永遠の覚悟」っていうトラックを作って、お送りしたんですけど、それが本当に奇跡みたいな形で曲になって。

4s4ki: あれは本当に奇跡でしたよね。なんか、全部がピタッとハマっていって、出来上がったときに「こんなことある?」って思いました。

DÉ DÉ MOUSE: でもそのときは、まだEPの話はなくて。僕の方でシングルとして出そうと思ってたんですよ。ただ、「この曲はちゃんとMVもつけたいな」と思って動いていたら、ちょっと時間が経っちゃって。

そしたら〈SASAKRECT〉のKussyさんに「この曲いつ出すんですか?」って聞かれて。「いや、MVどうしようかなって悩んでて……」って話したら、「じゃあちょっと、こっちサイドで進めてもいいですか?」って言ってくださって。で、マネージャーさんが「EPにしましょう!」って言ってくれて、4s4kiさんのサイドにバトンが渡ったんですよね。

4s4ki: そうでしたね。たしかあれ、年明けくらいだったと思います。それでEP制作が本格的に始まって、「永遠の覚悟」のMVも、昨日(10月1日)ちょうど公開されました

DÉ DÉ MOUSE: 本当に、僕は最初から“白”っていうイメージで作っていたから、MVも真っ白になってて、大満足でした。もう、理想通りすぎる仕上がりで。

―― お二人は、お互いを最初にどういった印象で見ていましたか?また、実際に話してみて印象変わった部分とかあれば教えて下さい。

4s4ki: DÉ DÉ さんの方が“少年”みたいですよ!

DÉ DÉ MOUSE: いやいやいや。僕は最初、もっとエッジーで尖った人なのかなって思ってたんですよ。でも実際に話してみたら、なんか凄く“少女感”が強くて。

これ、前にも話したんですけど、「4s4kiさんの“無垢さ”について」僕が一方的に熱く語るっていう謎の時間があって(笑)。なんか、そう…「少女性の無垢さ」っていう言葉しか出てこないんですよね。

4s4ki: え〜うれしい! でもなんか照れますね、それ(笑)。

DÉ DÉ MOUSE: でも、例えば「光」とか「闇」とかって、人ってどうしても“正反対のもの”が対極にあるってイメージしがちじゃないですか。でも、4s4kiさんの中にはそれが全部“重なったまま”存在してる感じがしていて。

良いも悪いも、全部彼女の中に一つとしてある。だからこそ“純粋”に感じるんですよ。子供って、良いことも悪いことも平気でやるし、でもだからこそ“本当の純粋さ”がそこにあるっていうか。そういうのが4s4kiさんには、凄くあると思いました。

4s4ki: そういう風に見てくれてるの、すごく嬉しいです。出来れば、ずっとそういうままで居たいなって思います。

DÉ DÉ MOUSE: なんかね、悟ったような“大人”にはなってほしくない気持ちもあります。4s4kiさんの歌詞が全部、言ってしまえば“素顔”だと思うから。

4s4ki: たしかに。私、かっこつける方が逆に苦手かもしれないです私の歌詞はほとんどが自分自身の日記なので、思ってることが歌詞にそのまま出ちゃうタイプですね。

―― 「永遠の覚悟」以外の曲についても、制作の流れや印象的だったことがあれば教えてください。

4s4ki: 他の3曲については、制作のやり方としては共通していて、まずDÉ DÉ さんがトラックを作ってくださって、それを受け取って私が詩とメロディを載せて、その後またDÉ DÉ さんに戻していくという流れでした。

DÉ DÉ MOUSE: 「不安に仕上がる」と「お前ゼウス」は、まずトラックをお送りして、そこから「ここはこうしてほしい」というオーダーが4s4kiさんから返ってくる、というやりとりで進みました。言ってみれば、リレーのような形でやっていったんですけど、その3曲に関しては、制作が滞ることがまったくなくて、本当にスムーズでした。

4s4ki: ただ、残りの1曲、「透明な人」は、他の3曲とは少し違う制作の流れでしたね。

DÉ DÉ MOUSE: そうそう。「透明な人」はもともと4s4kiさんがライブでも披露されていた未発表の楽曲で、そのモチーフをいただいたんですけど、それが本当にめちゃくちゃ良くて。最初は「僕、これ手を入れる必要ないんじゃない?」って思ったくらいでした。

でも、ずっと繰り返されてるコードだったり、展開の部分で少しドラマを足すことでより深くなるんじゃないかなと考えて、コードを変えたり、ストリングスを加えたりビートをめちゃくちゃ複雑にしていったら、また奇跡が起きたんですよね。

4s4ki: 全然違う曲になりましたよね。本当に、奇跡ってこんなに何回も起きるんだって思ったくらいで。

DÉ DÉ MOUSE: 僕はこの曲を「永遠の覚悟」のアンサーソングだと思っていて。最初が「永遠の覚悟」、そして最後に「透明な人」で終わるっていう構成が、僕の中ではすごくしっくり来ていて。このタイトルも本当に素晴らしいと思います。

4s4ki: 最初、「透明な人」の歌詞をもう少し変えようかって悩んだんです。でも、DÉ DÉ さんが「この抽象的なままでいい」って言ってくださって、それが凄く自信になって。最終的にそのままの歌詞で出すことができました。

DÉ DÉ MOUSE: 他の3曲って、どちらかというと“心情”を描いている印象なんですけど、「透明な人」は“情景”なんですよね。僕の中では、冬の寒い日の朝方の浜辺みたいな風景が浮かんできて。夜中までダラダラしてて、ちょっと朝になっちゃったから海でも見に行こうよ、みたいな。寒いねって言いながら、そういうシーンが。

4s4ki: その話、DÉ DÉ さんがすごい熱く語ってくださって(笑)。私もそれ聞いて「あ、じゃあ悩まなくていいんだ」ってなって。本当に歌詞を変える不安がなくなって、自信になりました

DÉ DÉ MOUSE: ほんと、“情景を詩で描ける人”なんだなって改めて思いましたよ。

―― そんなふうに信頼し合える関係性で進んだ中で、タイトルが「延命酒」になったのは、どういった背景だったんでしょうか?

4s4ki: 実は「不安に仕上がる」っていう曲を書いているとき、精神的にあまり良くない状態だったんです。リリックにも「心がただ動かず 家で酒を飲む毎日という一節があるんですけど、それくらいお酒に救われた時期で。だから“命を守る酒”っていう意味で、「延命酒」にしました。

DÉ DÉ MOUSE: 「不安に仕上がる」はMON/KUくんのサウンドスケープが凄すぎて本当に大好きな曲なんです。それと「延命酒」っていう言葉、めちゃくちゃ尖ってるし、すごい良いと思ったんですよ。「延命」っていうワードには惰性感があって、エッジが立ってていいなとおもいました。

4s4ki: ありがとうございます。わたしもこのタイトル、気に入ってます。

―― お互いにとって、“自分らしさ”って制作のどこに出ていたと思いますか?

4s4ki: やっぱり「透明な人」ですね。もともと自分で作ってたトラックに、DÉ DÉ さんがアレンジを加えてくださったんですけど、「あ、これが“DÉ DÉ さん節”か!」って。展開の作り方とか、聴いたことないジャンルになっていく感じがすごく楽しかったです。

DÉ DÉ MOUSE: モチーフを貰ったとき、音が良すぎてビビったんですよ。最初、「ビートメーカーが入ってるのかな?」って思ったくらいで、でも全部自分で作ったって聞いて、「あ、これ絶対もっとやった方がいいですよ」って本気で思いました。

4s4ki: 嬉しいです、本当に

―― 音楽のルーツについても伺いたいです。最初に音楽を始めたきっかけや、影響を受けた存在ってありますか?

4s4ki: 私、実は「この人がきっかけで始めた」っていうのがなくて……。自然と作るようになってた感じなんですよね。3歳くらいからエレクトーンを習ってたんですけど、楽譜を読むのが本当に苦手で(笑)。耳コピでしか弾けなかったんです。

だから、耳コピしてるとだんだん楽譜通りじゃなくなってきて、勝手にアレンジが入っちゃうんですよね。教えてくださる先生からしたらダメな生徒ですよね。。でもそれがすごく楽しくて。自分の中で“作曲”っていう意識もなく、ずっと弾いてたら曲ができちゃうって感じでした。高校でDTMを始めてからは、完全に“遊び=曲作り”っていう日常になっていった感じです。

DÉ DÉ MOUSE: すごいなあ……。僕の場合は、おそらく最初のきっかけはアニメなんですよね。子どもの頃、アニメのオープニングやエンディングを覚えて歌うのが好きで。たとえば『シティーハンター』のエンディング、「Get Wild」とか。TM NETWORKですよね。あれにハマって、そこから「都会の音=シンセサイザー」みたいなイメージが自分の中に強く残ったんです。

中学生の頃は、周りの男の子たちはみんなバンドでX Japanとか聴いてたけど、僕だけシンセの世界に憧れてて。そこからどんどん「自分はモテないけど、音楽なら目立てるんじゃないか」っていう淡い期待とか、「表現ならダメ人間でもスターになれる」みたいな、ちょっと必死なモチベーションでのめり込んでいった感じです。

―― 表現を続ける原動力って、どんなところにあると思いますか?

DÉ DÉ MOUSE: 結局、社会の“普通”があまりにしんどくて逃げ込んだ先が音楽だったのに、気づいたら表現の悩みで潰されそうになりながら努力してるっていう……なんかそういう矛盾はありますね。何か一つ曲が跳ねると、「次はこれを超えなきゃ」ってプレッシャーも凄い し、夜中とか急に将来が不安になって眠れなくなる。

4s4ki: めちゃめちゃわかります。私も夜中が一番きつい。寝ようとして目を閉じた瞬間に不安が襲ってきて、一生寝れないみたいなこと、よくあります。

DÉ DÉ MOUSE: でも、そういう不安をそのままリリックにできる4s4kiさんって、本当にすごいと思うんです。聴いた人が「あ、自分だけじゃないんだ」って思えるって、すごく大きな救いだと思っていて。

4s4ki: 私は逆に、かっこつけるほうができないタイプなんですよね。思ったことがそのまま全部出ちゃうので。でも、もしそれで誰かの心が少し軽くなるなら、それはすごく嬉しいことだなって思います。

―― 今回のEPの中で、初めて聴く人にまずおすすめしたい1曲は?

4s4ki: やっぱり「永遠の覚悟」ですね。あれが最初の奇跡だったので、どうしても一番思い入れが深くて。

DÉ DÉ MOUSE: 僕も「永遠の覚悟」は外せないですね。でも、同じくらい「透明な人」にも特別な思いがあって。最初と最後、この2曲が呼応して一つの輪になるような、そんなイメージを持ってるんです。だから両方聴いてもらえたら、本当に嬉しいです。

どうして音楽を作るのか──。

4s4kiとDÉ DÉ MOUSEの対話を辿って見えてきたのは、それが「生きるため」の選択であり、誰かの心にそっと触れるような音楽になっていったということだ。“延命酒”は、ふたりの人生と感情が溶け合って生まれた、静かな対話の記録である。

【リリース情報】

4s4ki × DÉ DÉ MOUSE 『延命酒』

Label:VLLV

DL/Streaming :https://linkco.re/HhgYv33D

Tacklists:
1.永遠の覚悟
2.不安に仕上がる
3.お前ゼウス
4.透明な人

【ワンマンツアー情報】

<ツアータイトル>
4s4ki独奏旅路二千二十五“延命酒”

公演日:2025.11.7(金)
会場名:福岡The Voodoo Lounge
開場18:00 /開演19:00

公演日:2025.11.14(金)
会場名:大阪246 LIVEHOUSE GABU
開場18:00 /開演19:00

公演日:2025.11.24(月・祝)
会場名:愛知名古屋RAD HALL
開場17:00 /開演18:00

公演日:2025.11.29(土)
会場名:東京渋谷WOMBLIVE
開場17:00 /開演17:30
オープニングアクトDJ:DÉ DÉ MOUSE&MON/KU

【チケット】※イープラスのみで販売。
前売り5,500円+1D /当日6,500円+1Dチケット一般(先着)
販売中 https://eplus.jp/4s4ki/