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インタビュー:who28 — 「誰でもない自分」から、ありのままの「TAIGA」へ

トラップ、ロック、ハイパーポップ……ジャンルの境界線を軽やかに飛び越え、独自の熱量を放ち続けるアーティスト、who28。2017年の活動開始以来、ストリートの空気感と内省的なリリックを融合させてきた彼が、最新EPに授けたタイトルは、自身の本名である「TAIGA」であった。
「理想の自分」であるwho28と、「未熟な自分」であるTAIGA。その狭間で揺れ動く葛藤と、彼を突き動かす音楽的ルーツについて、じっくりと言葉を紡いでもらった。

——まず自己紹介からお願いします。
who28:who28です。

——「who28」という名前の由来は?
who28:ちょうどLil Peepが亡くなった日(2017年11月)、ちゃんと音楽を始めようって決めたんだよね。
その時、本名でやるか、名前を付けるか迷ってた。で、自分の中で“エンジェルナンバー”みたいに感じてる数字があって。誕生日は2月8日なんだけど、街中で「2:08」みたいな数字をやたら見る時期があってさ。そこから“28”を入れたいと思った。

——誰かに憧れて付けた形ではないですか?
who28:うん。誰にも憧れてないし、追いかける存在もいない。作品が先に出て、あとから名前が付いてくるくらいの感覚だから、名前は何でもいいと思ってた。
ただ、誕生日が2月8日で、街中でも「2:08」とか「2」「8」をやたら目にすることが多かったから、エンジェルナンバーみたいな感覚で「28」を入れたかった。
それで「who」に「28」を足して、who28にした。ゲームの名前を付ける感覚にも近い。
「誰でもないし、誰にもならないけど、俺は俺」っていう感じ。

——当時の空気感もありましたか?
who28:あった。当時、XXXTentacionとかの世代って、読めない名前がかっこいい、みたいなノリがあった。名前を“読ませたくない”感じも少しあった。今は少し後悔してるけどね(笑)。

——もし今付け直すなら?
who28:正直、すぐ出てこない(笑)。でも、フジタイトみたいな、もっと一発で入る名前が良かったとは思う。

——音楽的なルーツを聞かせてください。今やってる音楽に「この人の影響」みたいなのは強いですか?
who28:強い意味ではあまりないかも。でも“魂がある曲”が好き。

——昔から聴いてた音楽は?
who28:David Bowieも好きだったし、Radioheadも本当に好き。

——そこからラップに行ったきっかけは?
who28:トラップを初めて知った時、ロックより自由で、何でもありだと思ったから。

——他に影響を受けた音は?
who28:昔からPerfumeが好きだったし、Lil Wayne、T-Painも大きい。初めて“オートチューン”の響きを聴いた時、「俺が好きだったのはこれだ」って気づいた。

——ヒップホップの入り口は?
who28:Wu-Tang Clanから。帽子を買ったのがきっかけで調べて、あの「Cash Rules Everything Around Me(C.R.E.A.M.)」のフックにやられた。そこから入った。ファッション経由だね。

——日本の音楽は聴きます?
who28:聴く。日本だと尾崎豊とか、ソウルフルなものが好き。魂が聴こえない音楽はあまり好きじゃない。でもm-floは好きだし、Mr.Childrenも聴く。

——あなたが曲に込めたい“熱”は何ですか?
who28:ライヴも含めて、聴いた人にエネルギーを渡せないものは意味がないと思う。まず自分自身がエネルギーを出せる曲をちゃんと作ってリリースしたい。

——今回のEPについて聞かせてください。タイトルの「TAIGA」にはどんな想いを込めましたか?
who28:「TAIGA」は自分の本名。who28としての“なりたい自分”“好きな自分”がある一方で、ダサい部分とか、さらけ出したくない未熟さもある。その未熟さの手触りが「TAIGA」っぽいと思った。
本当は「who28」というタイトルのアルバムを出そうとしてたけど、曲がまとまった時に「これは一回TAIGAとして出した方がいい」ってスイッチが入った。次のアルバムは「who28」として出したい。

——曲のどんなところに「TAIGA」を見出したんですか?
who28:1曲目の「Fuck Love」。Trippie ReddとXXXTentacionの「Fk Love」を手がかりにしつつ作り始めた部分があって、歌詞の中に「Baby, I need you in my life」みたいなフレーズ感を入れてる。そこから先で、自分は「一緒にいたい気持ち」と「今は一人で自分に集中しないといけない」がぶつかってる。その葛藤が、今の自分の未熟さとして出てる気がした。
あと最近、自分が“ズル剥けていく”感覚がある。綺麗に整った顔してる曲より、今の自分のその感じが入ってる方が好き。

——終盤の曲も同じ線?
who28:ラストの「miss you」みたいな曲も、日常のまま歌ってるだけに近い。それもwho28としての強がりとかじゃなく、素の自分=TAIGAっぽいと思った。
でもwho28とTAIGAを完全に別人格として切り分けたいわけでもない。結局ひとつだと思う。

——逆に、あなたにとって「who28的な自分」って、どんな状態ですか?
who28:シンプルに、自分が自分を好きでいられる状態。理想の自分に近い時。
俺、XXXTentacionが亡くなる前のインスタライブを今も見返すことがあるんだけど、その時々で刺さる言葉が違う。今回は「なりたい自分になれ」みたいな言葉が強かった。

——理想像はありますか?
who28:浅い言い方になるけど、楽しく音楽を作っていたい。
あと、輪廻転生を少し信じてて。来世の自分が、who28っていうアーティストを見つけて「かっこいい」って思ってくれたら、それが人生の目標かもしれない。だから死ぬまでに1曲でも多く良い曲を作って出したい。来世に届くくらいには、ちゃんと広く伝わってほしいとも思う。

——XXXTentacionから受けた影響を、もう少し具体的に聞きたいです。
who28:Juice WRLDは亡くなったあとに好きになったけど、Lil PeepとXXXTentacionは生前から本当に聴いてた。
影響っていうなら、「人間として成長しないと曲も良くならない」って感覚。XXXTentacionも、自分を変えようとしてた途中だったと思う。だから自分も、日々ちゃんと成長したい。心が動いた出来事を、考え続けて、結論を出して、また考え直して…その繰り返しを止めたくない。

——あなたにとってヒップホップは何ですか?
who28:ジャンルとしてのヒップホップを崇拝してる感じはない。自分の曲を作る時も「これはロック」「これはヒップホップ」って線引きはしてない。自分が思う“かっこよさ”がヒップホップだと思ってる。

——それでも「ラッパー」と名乗る理由は?
who28:始まりが作曲じゃなくて、フリースタイルを知ったり、バトルに出たり、そういうところから始まってるから。どこまで行っても自分の軸はラッパー寄りなんだと思う。
別の畑の人から見たら、どう見てもラッパーとして見られるし、逆にラップ畑の場所に行くと「ハイパーポップっぽい」と言われたりもする。でも、こっちはこっちでラッパーとしてやってる感覚が強い。
東京はジャンルを越えて、かっこいいと思ったら認め合う空気がある。一方で大阪は、交わらないくらい細かく分かれてる感じが強かった。自分が大阪でやった時に「こんなオルタナっぽいことやらない」みたいに言われたこともあるけど、こっちはヒップホップだと思ってやってる。


——どんな人に音楽を届けたいですか?
who28:全員に届いてほしい。その中でも、特に心に響いてほしいのは、自分と戦ってる人。
言われたことだけをこなして、人生を深く考えないまま進んでいく人が多い気がするんだよね。せっかく一回きりなんだから、人生にもっと熱くなれって思う。
“クールでいることが正しい”みたいな空気は好きじゃない。取り繕って、かっこいい言葉しか吐かない人も多いけど、そんなわけないじゃんって思う。


——最後に、作品を聴く人へメッセージをお願いします。
who28:もし人生のどこかで、一歩踏み出したい瞬間にこの音源が鳴ってたら、一緒に少し進める作品にしたい。
気負わずに、生活の中のどこかで流してほしい。勇気が欲しい時、背中を押してほしい時に、役に立てたら嬉しい。
聴いてくれる人がいるから音楽を続けられる。いつもありがとう。

「誰でもない」と名乗ることで始まった彼のキャリアは、今、自らの「本名」を冠するほどに誠実な地点へと到達した。who28が放つ熱量は、形を変えながら、いつか来世の彼自身、そして今を生きる私たちの背中を静かに、しかし力強く押し続けてくれるはずだ。