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インタビュー | nerdneko ── “Stargazing Youth”と〈青〉、そして“いまの東京”

聴いた東京を拠点として活動するアーティスト nerdnekoに、新作『Stargazing Youth』をめぐって話を聞いた。初音ミク×シューゲイズの“ミクゲイザー”、作品を貫く〈青〉の感覚、〈Stargazing × Youth〉に込めた心の動き、そして“ポップでカオス”ないまの東京への想いを聴いた。

Q: まず、ご自身の音楽をどう名乗っていますか?

A: 初音ミクとシューゲイザー/オルタナを掛け合わせた〈ミクゲイザー〉を軸に活動しています。

Q: 〈ミクゲイザー〉を始めたきっかけは?

A: 伝説化している『Miku-gazer Compilation Vol.1』に衝撃を受けたことです。シューゲイザー自体は好きでしたが、ミクの声が入ることで一気に自分事になりました。中学の頃はハチ(米津玄師)、wowaka、DECO*27のような“バンド感のあるボカロ”にも強く惹かれていました。

Q: アーティスト名「nerdneko」の由来は?

A: 猫が好きで、海外のナードカルチャーも好き。その2つを組み合わせたノリで付けました。結果的に海外の人にも覚えてもらいやすかったです。

Q: 今作は“青”の印象が強い。テーマですか?

A: そうです。未熟さや憂い、精神的な部分──自分の根にあるイメージを色にすると“青”になる。アートワークも楽曲のトーンも、その“霞がかった青”で統一しました。

Q: 表題「Stargazing Youth」に込めた意味は?

A: “Stargazing(空を見上げる/想いに耽る)”と“Youth(青春/未完成)”を掛け合わせています。〈自分は必要とされているのか〉という陰から、少しずつ“光を探す”方へ進む感情を、厚いギターレイヤーで解放していく──そんな流れを凝縮した曲です。

Q: 制作の順序は?

A: 皮肉にも「Stargazing Youth」は最後にできました。先に「廃工場にて」や、「放心のモラトリアム」といった曲で方向性が固まり、1年かけて最終的に表題曲が結晶化しました。

Q: なぜ“人の声”ではなく初音ミクなのか?

A: ミクの少し無機質な声は、楽器に近い心地よさがあります。人間とは違う“未完成の青さ”が残り、シューゲイズのにじみととても相性がいいと感じています。

Q: 〈ミクゲイザー〉と呼ばれることをどう捉えていますか?

A: うれしいです。シューゲイズ好きとボカロ好きの橋渡しになる場でもあるし、昨今増えてきてはいますが、掲げてやっている人はまだそんなに多くない印象ですので、現行の一角として広げていきたいです。

Q: いまの東京のシーンはどのようになっていると思いますか?

A: ハイパーポップ的なデジタル感と、バンドの熱が混ざる“ポップでカオス”な感じが強い。情報や人の行き来が多く、外からの要素も取り込みやすい都市だと思います。ポジティブに見ています。

Q: 海外の反応は? 今後の予定は?

A: リスナーは“海外が半分以上”です。中国のプラットフォーム(BilibiliやRED/小紅書)経由の広がりも感じます。現在調整中ですが、海外公演、1月には“TOTAL FEEDBACK”への出演が決まっています。中国アイドルへ提供した楽曲の“初音ミク版”もアルバムに収録されます。

Q: これから挑戦したいコラボは?

A: ハイパーポップ/デジタル方面との交差、そしてフルバンド編成。2つの角度で“声の居場所”を探したいです。

Q: どんな時にこのアルバムを聴いてほしい?

A: 立ち止まったり、現実逃避したくなった時に。ここから入った方には、過去作も聴いてもらえたらうれしいです。

『Stargazing Youth』は、〈ここに自分は必要か〉という陰から〈光を探す〉へと進む心の軌跡だ。立ち止まったり、現実逃避したくなったときに手に取ってほしい。ここから入った人は、過去作にも触れてみてほしい――未完成の青さのまま、前へ。