
同じ時期にアルバムを出した2人が、同じ夜を“主役”として迎える。
Gokou Kuytは1stアルバム『Ain’t Gang』を、BHS Svveは4thアルバム『Pop Dilemma』をリリース。そして2026年1月11日、Veats Shibuyaで「Super Release Party」を共同主催する。
出会いはSoundCloud、接点は世代と界隈をまたいで増殖していった。片や“トーキョーシャーマン”の道から、片や“DEMONIA”の周辺から。
自己紹介
Gokou Kuyt

「一応ヒップホップをやってるんですけど、10代の時に海外のクラウド・ミュージックにかなり興味を持って。メインストリームではないところから聴き始めて、自分でもやってみたいなって思ったのが最初で、今でもそれの延長戦みたいな感じでやってます。」
BHS Svve

「僕は高校生ぐらいまで、そんなに音楽を聴く機会がなかったんですけど、当時MCバトルが流行ってて。それで“ラップなら僕にもできるんじゃないかな”と思って始めました。
今は大きく2種類、自分の中でやってると思ってて。いわゆる“ラッパーっぽい”というか、聴いた人も強い気持ちになれるラップっぽい音楽と、他のジャンルに見られるような“共感”とか“寄り添い”みたいな音楽。その2つです。」
「ちゃんと認識したのは2021年」——出会いの入口は“音”
-お互いのことを“しっかり認識した”タイミングって、いつぐらいでした?
Gokou Kuyt
「曖昧なんですけど……友達づてに“こういうやつがいる”って聞いてたのが先か、SoundCloudで曲を聴いたのが先か、どっちが先か覚えてなくて。
でもSoundCloudで曲を聴いて“かっこいいな”って思って、いいねしたのは覚えてます。それがちゃんと認識したタイミングだと思います。」
-何年前ぐらいとか、記憶ありますか?
Gokou Kuyt
「たぶん……2021年です。」
BHS Svve
「僕は嬉しくて結構鮮明に覚えてるんですけど、地元が札幌で。地方で“1MCバトラー”として頑張ってた時に、先輩から“東京にもラップシーンがある”って教えてもらって。
釈迦坊主さんがやってたパーティー(トーキョーシャーマン)の話とかを聞いて、“こんなカルチャーがあるのか”って。で、“Gokou Kuytっていうかっこいいラッパーもいるよ”って教えてもらったのが最初で、2018〜19年ぐらいだったと思います。
しばらくはずっと“かっこいいな、会ってみたいな”って思ってたんですけど、2021年にカイトさんからSoundCloudにいいねが来て、僕も当時から好きだったんで“ありがとうございます”って繋がりを持ちに行って。上京して、やっとちゃんと会えた、みたいな感じでした。」
-最初はSoundCloud繋がりですか?
BHS Svve
「そうですね。でもそこでは会話はほぼなくて、音だけを先に“こういう人がいる”って知ってただけで。会話したのはもうちょっと後かなって。」
互いの曲のファーストインプレッション
-曲を聴いた時、どういう感想やイメージを受けましたか。お互いの曲に対して。
BHS Svve
「北海道って、若いとどうしても閉鎖的というか。他県に行くための交通費も出せないし、情報もわかんない状況で。
ヒップホップっていうと、ブルーハーブみたいな“源流”の観念が強いじゃないですか。それはそれでめちゃ好きだったけど、ずっとギャップに悩んでて、“自分はそういうのじゃないしな”って思ってたんです。
その時に、カイトくんの曲を初めて聴いて……日常を切り取ってやるみたいなところのかっこよさで、固定概念が変わりました。衝撃でした。」
Gokou Kuyt
「俺は、世界中でこいつが一番ラップうまいって思ってるんですよ、マジで。
MCバトルの動画も観たことあるんですけど、硬派なラップもめちゃくちゃできるし。
でも俺がSoundCloudで最初に聴いた時、結構メロディアスで、ボーカルのキー上げてたような曲だった気がして。“え、こういうこともするんだ、この人”って。友達から聞いてたイメージが“MCバトルめっちゃ強い”だったから、意外でした。
それで(後に)アルバムを聴いて本気でくらって、そこから普通に普段聴いてるって感じです。」
-互いの最新作から、1曲選ぶなら何ですか?
-お互いの作品はもう聴かれてると思います。相手のアルバムから“好きな曲”を挙げるならなんですか?
BHS Svve
「僕から言っていいですか。カイトくんの『Ain’t Gang』は、アルバムとしては多分ファーストですよね。
結論から言うと、1曲目の“AIN’T GANG INTRO”が一番好きです。理由はいろいろあって。
前作がたぶん1年前ぐらいのリリースで、その前って結構空いてたと思うんですよ。
そこからしばらく会えてなくて、“活動どうなってるんだろう”って思ってたら、急に“もうAin’t Gangできてるよ”って。しかも全曲DJ UPPERCUTのプロデュースでやるって聞いて、“え、マジか”って。
先行で何曲か聴かせてもらってたけど、改めて出た時に、東京シャーマン周辺の頃からの気持ちの動きとか、‘Gokou Kuytっていうアーティスト像’を、冒頭でバンって出してくる衝撃があって。アルバム始まるぞ、っていうインパクトも含めて、1曲目が一番好きです。」
Gokou Kuyt
「めちゃめちゃいい感想だな……俺、答えられるかな。
俺は“やすらぎ”が、俺が入ってるっていうのもあって一番好き。
あと、“奇しき赫耀”みたいな曲が、俺の中で“BHS Svveって感じ”がする。今までもこういう曲あったけど、なんか……
それと、MVになってる曲(“10XL”)みたいに、Jロックっぽいエモーショナルなリリックで、心に刺さるメロディの曲もあって。
今までよりスタイルの幅が広がったのかなって、単純に思いました。」
共同制作「やすらぎ」について
-一緒に作られた楽曲、“やすらぎ”はどういう流れで決まりましたか?
BHS Svve
「なんでだっけ……。
昨年リリースされてたカイトくんのミックステープにも、プロデューサーのWTHRがいて、プロジェクトとしては“誰か呼びたいね”って流れがあったんですけど、そりゃまずここだろうってなって。
ビート作ってもらって投げて、お互いバース投げて、その後スタジオ行きましたよね。EVOEL STUDIO。
当日、元のビートはあったんですけど、“6度上げた方が良くない?”ってなって。デモのデータは全部使わないで、6度上げたビートでスタジオで録ってできました。」
-アルバムの中ではどういう立ち位置ですか?
BHS Svve
「今回、意図的に客演を減らしてる部分もあるんですけど、リードとしては“10XL”と“やすらぎ”が二大かなと思ってて、あと“Login”。その3曲が特に気に入ってます。
スタイルの幅を広げようと思って作ったアルバムなので、“今までやってないことをやろう”って作ってて、“やすらぎ”はそれがうまくできた。アルバムの中で“こういう作品だよ”っていう曲になってると思います。」
アルバム制作の核、タイトルに込めたものを順番に伺えますか?
BHS Svve
「『Pop Dilemma』って、タイトル通り“ジレンマ”です。
生きてる上でも制作する上でも、矛盾を感じることが多くて。
ポップスのかっこよさと、ヒップホップのかっこよさって、僕の中では割と相反すると思ってる。でもどっちも好きで、どっちも手に入れるのは難しい。
それって音楽だけじゃなくて、死にたいって言っても生きたい日があったり、痩せたいけど食べちゃうとか、めっちゃあるじゃんって。みんな抱えてるだろうなって。
で、それって“ただの現象”でもある。でも、それに抗うこと自体がかっこいい、尊い、って思って。
感じた矛盾に抗うことが“かっこいいんだよ”、それがポップなんだよ、っていうのを表現しようと思って作りました。」

Gokou Kuyt
「『Ain’t Gang』って、ギャングじゃないよってだけなんですけど。
中学生ぐらいからヒップホップへの憧れがあって、怖いことをラップしてたり、ハードなバックグラウンドがあって、リアルを歌ってる人がずっと好きだった。
でも自分はそういうバックボーンがない。ある程度幸せな家庭で、人並みの生活を送ってきた。だから歌うことが平凡だったりして、ヒップホップできないのかな、って思ったりもして。
その“リアルじゃないんだろうな”みたいなものを抱えながらやってたけど、ある時、悪いことを歌ってる人たちも生活の一部を切り取って歌ってるんじゃないか、って。
切り取って歌う行為がヒップホップなんだって思えた。ギャングじゃないけど、ヒップホップだよ、っていうアルバムを作りたいって思いました。
で、デモをDJ UPPERCUTに送ったら“やりたい”って言ってくれて、そこから全部ビートを作ってくれて。
“ほとんどの人は普通の生活してる。だからカイトがやってることは共感を得れると思う”って言ってもらって、勇気が出たというか、やるべきことが見えた感じです。」

リリースパーティが“スーパー”な理由:
-イベントのブッキングはお二人で?

Gokou Kuyt
「二人でやってます。」
-どういう流れでこのラインナップになりましたか?
BHS Svve
「最初は、アルバムの時期が近いから一緒にリリースパーティーやろうって流れで。そこから“特別なでかいリリパ”にしようってなりました。
お互いの周りで親交が深いアーティストをいっぱい呼んで、盛大にやろうって動きで。
たぶんカイトさんの周りと僕の周りって、ちょっと世代がずれてて。カイトさんはトーキョーシャーマン周辺の道で切磋琢磨してきた人たちで、僕は上京した2022年以降にDEMONIA周辺で友人関係ができた。
でも深い友人たちを呼んだら、主軸はリリパだけど、クロスオーバー的に特別なイベントになると思ってブッキングしました。」
「この日だけは俺らが主役」——先輩への敬意と、越える気持ち
-共通で意識したテーマはありますか?
Gokou Kuyt
「釈迦さんとか、俺からしたら師匠みたいな大先輩で。正直まだ何も勝ててないって思ってる。
でもこの日は、俺の方がライブのケツなんですよ。主役だから。
この日だけは、誰よりも“俺らが主役になりたい”ってテーマが俺の中ではあります、勝手に。」
BHS Svve
「僕もほぼ同じ気持ちで。僕はその前に置かせてもらってるんですけど、リリースパーティーだから自分が主役だぞって思いで臨む。
同時に、憧れてた人たちと一緒にできる光栄さもあるし、DEMONIA周辺で一緒にやってきた仲間たちが“お祝い”で出てくれてる。だからライブで“答えなきゃいけない”って思ってます。」
1/11は“ジャンプアルティメットスターズ”な日
-お客さんに感じてほしいことは?
BHS Svve
「まず、揃うこと自体がだいぶスペシャルだと思うので、それを楽しんでほしい。
あと、揃うってことは、客演曲を客演の方と一緒に見れる可能性が高い。一日でそれが起きるのってなかなかない。ワンマンじゃないと見れないことが起きるんじゃないかなって。」
Gokou Kuyt
「自分たちで打ったイベントだから尺も長い。普通のショーケースだと新しいアルバムの曲だけで終わっちゃうけど、こういう日なら昔の曲もできる。昔の曲聴いてた人も、今の曲聴いてた人も、楽しめるようなライブにしたい。」
BHS Svve
「ジャンプアルティメットスターズってわかります?北斗の拳とワンピースとか、世代が違って、その漫画を知らなくても一緒に戦うのがなんか楽しいじゃないですか。
それと似てて、2017〜18年以降、パンデミック前から後、今にかけてのシーンを好きだった人が見に来たら、オールスター的に楽しめるイベントだと思います。」
リリパ後の動き
-イベントをきっかけに、この後どう動いていきたいですか?
Gokou Kuyt
「とりあえず曲はできてきてるんで、リリパやった後、次がアルバムかミックステープかわかんないけど出していきたい。来年も何かできたらいいなって。」
BHS Svve
「僕もデモだと、もう3〜40曲ぐらいあるんですよ。
『Pop Dilemma』は出したけど、まだジレンマと戦い中というか。今まではこのアルバム出すために2年半ぐらい詰めて作ってたけど、リリパやったら昇華されるかなって思うので、すごいペースで出るかもしれない。
露出増やして、新しい音楽届けられるようにしていこうと思います。」
来場者へメッセージ
BHS Svve
「昔は来てたけど離れちゃった人も、普段から足を運んでくれてる人も、この日ライブ見に来てくれれば絶対楽しめると思います。
僕とカイト君からしても、“今のこの2026年の僕らのいるところ、見えてるもの”を感じてもらえたら嬉しい。」
Gokou Kuyt
「アルバムを作った時の気持ちで、俺らがどこから来てどこを目指してるのか、それが少しでも伝わればいい。
途中経過だけど、今できるベストをみんなに見てほしいです。」
BHS Svve
「ジレンマって、かっこいいけど辛いと思うんですよ。もし何かしら抱えてる人が来てくれるなら、フレックス的な元気づけだけじゃなくて、“みんなそうだし、それがかっこいいよ”っていうのを、イベント通して伝えられたらいいなって思います。」
番外編:お互いに質問
BHS Svve
「服とか、どこで買ってるんですか?」
Gokou Kuyt
「古着ばっかり。高円寺の“深緑”って店で買ったものを着てることが多いかな。」
BHS Svve
「僕、服あんまり自信ないので、今度連れてってください。」
Gokou Kuyt
「深緑もだけど、服屋って意外といろんな服置いてあるから。尖った方向性一つに振り絞った店って、そんなにないよ。」
Gokou Kuyt
「ちなみに近々、MCバトル出る予定ある?まだ気持ちあるの?」
BHS Svve
「予定は立ててないけど、出たくなったら出たい。オファーあったらめっちゃ出たいです。
勢いでエントリーしちゃうんですよね。」