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INTERVIEW | KENTENSHIが語る「paranoia」、日本のインターネットカルチャー、そして音を通じて見つけた自由


椎名もた「少女A」をサンプリングした「paranoia」によって、世界中のリスナーへその名を広げたKENTENSHI。アメリカ・ノースカロライナで育った彼の音楽には、幼少期から触れてきたヒップホップやR&Bと、YouTubeを通じて出会ったボーカロイド、Jロック、アニメ、ゲームの感覚が共存している。
15歳で制作した「paranoia」は、ショート動画を中心に拡散され、原曲「少女A」が新しい世代や海外のリスナーへ届く流れとも結びついた。しかし本人は、その現象を自身の功績として語ろうとしない。椎名もたの作品には、時代を超えて再び発見される力が備わっていると考えているからだ。
日本を初めて訪れ、ライブミュージックに触れ、自身初のDJプレイも経験したKENTENSHI。窓辺リカによる「bootleg wonderland」のリミックス、日本で共演したいアーティスト、制作環境の変化、ファッションやゲームから受ける影響まで、現在の彼を形作るものについて聞いた。


――まず、アメリカで育った頃について教えてください。アニメやゲーム、ボーカロイドなど、日本の文化へ深く惹かれたきっかけは何だったのでしょうか。


僕が育った環境は、その地域ではかなり平均的なものだったと思います。子どもの頃は活発で、幼なじみと外でよく遊んでいました。アメリカンフットボールが大好きで、チームに所属していたわけではありませんが、よくプレイしていました。
同時に、すごく好奇心の強い子どもでもありました。7歳から10歳くらいの間にインターネットを頻繁に使うようになって、学校へ行く前も、帰ってきた後も、毎日YouTubeでいろいろな動画を観ていました。
特に覚えているのが、2014年頃に観たTeddyLoidの「ME!ME!ME!」のミュージックビデオです。当時の僕には早すぎる内容でしたけど(笑)。Jロックやマスロックの映像もたくさん観ていました。
当時のYouTubeには、アニメ全12話や13話をまとめて投稿しているチャンネルもあったんです。『はたらく魔王さま!』『ベン・トー』『Charlotte』『ロザリオとバンパイア』『デッドマン・ワンダーランド』など、いろいろな作品を観ました。
Xbox 360にYouTubeをダウンロードできたので、ほとんどの作品をXboxで観ていました。僕にとってYouTubeは、音楽もアニメも、新しい文化も発見できる場所でした。


――お父様はビートメイカーで、自宅には楽器や機材があったそうですね。幼少期にお父様から受け取った、最も大きな音楽的感覚は何だと思いますか。


父が作っていたヒップホップやラップ、両親が聴かせてくれたR&Bやヒップホップを通じて、リズムとバウンスを理解する感覚が身についたと思います。
理論として教わったという感覚より、日常の中で自然に吸収していきました。今の僕のドラムやグルーヴにも、その経験は深く残っています。


――15歳のとき、椎名もたの「少女A」をサンプリングして「paranoia」を制作しました。当時、なぜこの曲を選んだのでしょうか。


その頃には、すでにボーカロイド音楽へかなり夢中になっていました。YouTubeでサンプリングに使えそうな曲を探している中で「少女A」に出会ったんです。
以前から知っていた曲だったので、聴いた瞬間に「これを使ってみよう」と思いました。特に使いたかったのがサビです。
日本の音楽を聴いていると、サビが鮮明に残ることが多いと感じます。メロディや展開が丁寧に書かれていて、曲の中でもサビが際立っている。「少女A」にも、その魅力がありました。


――「paranoia」が広がったことで、原曲の「少女A」も世界中の若いリスナーから再発見されました。過去の作品が新しい文脈を得て、現代のグローバルなリスナーへ届いていく現象をどう感じていますか。


正直に言うと、「少女A」は以前からインターネットカルチャーやボーカロイドシーンへ大きな影響を与えていた曲だと思っています。
だから、僕が「少女A」を再発見させたという形で、多くの功績を受け取ることには抵抗があります。
椎名もたの作品は、時間が経つたびに再び浮上してくるものだと思います。彼の音楽には時代を超えて残り続ける力があります。「少女A」が再び注目されたことも、その作品自体が持っている力によるものだと考えています。


――KENTENSHIさんの楽曲では、緻密で予測できないドラムプログラミングが印象に残ります。リズム感に影響を与えたアーティストを教えてください。


誰が一番影響を与えたのか、一人に絞るのはかなり難しいです。僕は音楽をいろいろな方法で聴いていますし、リズムゲームもよくプレイするので、常に大量の楽曲へ触れています。
その中でも、長谷川白紙はいつも動向を追っているアーティストです。次に何をするのか、常に気になります。音楽性やスタイルにとても興味があります。
ボカロPでは、nihоsikaの存在も大きいです。Synthesizer VやUTAUの重音テトを使用していると思うのですが、楽曲のエネルギー、ドラム、リズムが本当にすごい。ミックスも非常に丁寧です。
ボーカロイド音楽が好きな人には、ぜひ聴いてほしいです。僕が一番好きな曲は「LATENESS」です。


――バンドから受けた影響もありますか。


10代から現在まで聴き続けていて、アレンジや曲作りの感覚を形作ってくれたバンドがいくつかあります。
まず、österreichです。非常に個性的なサウンドと楽曲構成を持つバンドだと思います。初めて「無能」を聴いたとき、僕は泣きました。本当に美しい曲です。
鎌野愛の歌声も大好きです。österreichで歌っている作品はもちろん、彼女のソロワークもよく聴いています。
ハイスイノナサも素晴らしいバンドです。実験的なロック、電子音楽、ミニマリズムが組み合わさったようなサウンドで、長い間ファンです。鎌野愛も在籍していましたし、バンドの中心人物の一人である照井順政のワークも好きです。
特に『呪術廻戦』のサウンドトラックは素晴らしいと思います。


――ビートを組む際、特に意識していることはありますか。


エネルギーとバウンスです。同じパターンを繰り返す場合も、細かい音やリズムの変化によって、曲が常に前へ進んでいるように感じられる状態を意識しています。
リズムゲームや日本のロックを聴いてきたこともあり、一つの曲の中で複数の展開やリズムが共存することにも惹かれています。
低スペックノートパソコンから、自分の頭の中を再現できる環境へ


――現在21歳ですが、音楽を始めた頃から制作環境はどのように変化しましたか。


ハードウェア面では、大きく変わりました。
今の環境を手に入れる前は、誕生日にもらった、本当に低スペックのノートパソコンで曲を作っていました。自分専用のパソコンを持ったことがなかったので、当時はそれだけでも本当にうれしかったです。
中学生の頃に作ったビートの多くは、母の仕事用ノートパソコンを借りて制作していました。そこから、自分で組み立てたデスクトップパソコンを使えるようになった。これは僕にとって非常に大きな変化です。


――DAWやソフトウェアも変わりましたか。

DAWは現在もFL Studioを使っています。最近のFL Studioも好きですし、アップデートの内容もすごく良いと思います。
プラグインの選択肢も以前より増えました。エフェクト、モジュレーター、グラニュラー系のプラグインなどを使うことで、自分の考えていることを、より明確かつ複雑に表現できるようになりました。
以前よりも制作上の自由を感じています。
ドラム、効果音、サンプル、サウンドデザインの素材も、自分に合ったものを集めてきました。音がクリアで、一つひとつの素材を実際の制作へ使いやすくなっています。
今は、頭の中に浮かんだものを、かなり自由に形にできる感覚があります。ここ2、3年でギターも始めたので、使える手段が増えました。いろいろな技を隠し持っています(笑)。
「bootleg wonderland」を、レースゲームのような速度で再構築する


――窓辺リカさんの「bootleg wonderland」を初めて聴いたとき、どのような印象を受けましたか。


最初に聴いたときは、「オーマイガー、これはヤバすぎる!」と言ったと思います。
インストゥルメンタルに心から驚きました。激しいエネルギーを持ちながら、全体はしっかり制御されている。さまざまな音やセクションが入っていて、すごくテクニカルな楽曲です。
TORIENAさんのボーカルパフォーマンスも、本当にクールだと思いました。


――今回のリミックスでは、どのようなコンセプトを考えていましたか。


リミックスを制作するとき、ビデオゲームのサウンドトラックをかなり意識していました。
当時『ソニックレーシング クロスワールド』や『マリオカート8』など、レースゲームのサウンドトラックをよく聴いていたんです。
ゲーム音楽の作曲家が、複数のジャンルから特徴的な要素を取り出し、ゲームやコースのエネルギーへ変換していくような手法が好きです。
マスロックとジャングルに、ハードテクノ的な要素を組み合わせるような発想ですね。異なるジャンルを一つの目的に向けて混ぜていく方法が、とても面白いと感じています。
僕も自分が持っている技術をすべて使って、原曲のエネルギーに釣り合う、楽しくて激しいトラックを作りたいと思いました。


――日本のアーティストの曲を再解釈する際、自身のスタイルと原曲への敬意をどのように共存させていますか。


僕のスタイル自体が、多くの日本のアーティスト、プロデューサー、バンドから影響を受けています。そのため、両者を分けて考えることはあまりありません。
僕は、リミックスや再解釈をするアーティストと楽曲に対して、大きな愛情と敬意を持っています。
現在は以前より制作技術も上がったと感じています。だからこそ、楽曲へ最大限の労力を注ぎ、自分にできることをすべて出し切る。それが原曲に対する敬意の示し方だと思っています。
初めて訪れた日本で、音楽への火が再び灯った


――U/M/A/Aとの取り組みを通じ、日本での活動も広がっています。今後、日本でどのようなことに挑戦したいですか。


日本の音楽イベントへもっと足を運びたいですし、可能であれば出演もしたいです。
初めて日本を訪れた経験は、僕にとって大きなものでした。すべてをインタビューで説明すると、ものすごい長さになってしまいます(笑)。
短くまとめるなら、人生で最も美しい経験の一つでした。
たくさんの愛情とライブミュージックに触れましたし、初めて観客の前でDJもしました。音楽に対する新しい火が、心の中へ灯ったような感覚がありました。
今は以前よりも刺激を受けていますし、素晴らしいアーティストたちと、素晴らしい曲を作りたいという気持ちも大きくなっています。
今後、ゲーム、アニメ、アニメーション作品のサウンドトラックを手がけたいと思っています。
鎌野愛、nihоsika、原口沙輔——日本で共作したいアーティスト


――現在、興味を持っている日本のアーティストや、今後コラボレーションしたい相手を教えてください。


何人か思い浮かんでます。
まず、どんな形でもいいので、鎌野愛と一緒に仕事をしたいです。彼女の作品には深いつながりを感じています。どのように制作しているのか、何から影響を受けているのかにも興味があります。
nihоsikaとも制作したいです。現在活動しているボカロPの中でも特に好きな存在で、作品が本当に素晴らしいです。
日本人ではないですが、ippo.tskの作品も大好きなので、いつか一緒に仕事をしたいです。
原口沙輔とも制作したいです。彼のソングライティングはとてもキャッチーで、一緒に楽しい曲を作れそうだと感じています。プロダクションもすごいですし、ミックスもすごくクリアです。彼らから多くのことを学びたいです。
ueiiも非常にクールなボカロPです。
日本のアンダーグラウンドラッパーでは、yveとyvnlazyが好きです。彼らへビートを作ってみたいです。


――さらに大きな夢として、共演してみたいアーティストはいますか。


アイナ・ジ・エンドです。彼女はすごくクールで、スタイルも大好きです。
米津玄師も同じです。二人とも歌詞、声、表現のスタイルに個性があります。
Cö shu Nieとも制作したいです。僕にとって象徴的なバンドの一つで、サウンドが独特で、非常に広がりがあります。
ほかにもたくさんいます。全員の名前を挙げたいくらいです。


――WEEAVEは、音楽、ファッション、ユースカルチャーの交差点を扱うメディアです。音楽以外では、どのような文化から刺激を受けていますか。


現在は、ほとんどすべての芸術表現やカルチャーから影響を受けたり、制作へのモチベーションをもらったりしています。
普段からパソコンの前にいることが多いので、常に何かを観たり、ゲームをしたりしています。
ゲームでは、『SOUND VOLTEX』のようなリズムゲームから継続的に刺激を受けています。自分の音を使って新しいことを試したいと思えますし、楽曲への向き合い方も変えてくれます。
自宅には『SOUND VOLTEX』のコントローラーもあります。ゲームセンターへ行けないときは、家でプレイしています。


――ファッションについてはいかがですか。


インターネットで深く調べていく中で、新しいコーディネートのアイデアを見つけたり、自分が好きなデザイン言語について学んだりしています。
特に「カラス族」は、長い間、僕の人生や服装へ大きな影響を与えてきた日本のファッションサブカルチャーです。現在も、自分がどのような服を着たいかを考える上で重要な存在です。


――映画やビジュアルアートから受ける影響もありますか。


カメラワークがクールで、物語が面白かったり複雑だったりする映画には、いつも惹かれます。
Instagramでは、画家やデジタルアーティストをたくさんフォローしています。彼らは常に素晴らしい作品を投稿しています。
作品自体から刺激を受けることも多いですし、一つの表現を継続し、努力を積み重ねている姿を見ることも大きな励みになります。


――最後に、KENTENSHIさんにとって、クリエイティブな表現における「クール」とは何でしょうか。


自分自身であることを謝らず、最も生々しい形で自分を表現している人がクールだと思います。
自分を表現することを恐れない人。そして、怖さを感じていても、それでも表現する人です。
僕自身も、日常生活の中で自己表現について学んでいる途中です。
それでも、誰もが少しずつ、自分自身でいることを心地よく感じられるようになると思っています。